高齢者を支える制度あれこれ

任意後見制度(現在は元気でご本人に判断能力があるなら)

任意後見契約は文字通り、ご本人と支援者との契約です。ご本人自ら判断で信頼できる方を選び(注1)、託すことができるのが最大のメリットだと思います。
契約ですから、支援される側と支援する側ともに自由な意思により、契約内容(認知症など判断能力の衰えた時のどのような支援をするか等)も原則自由に決められます。

ただし重要な契約ですから口約束や私文書による形式は認められておらず、公正証書により契約書を作成しなければなりません。
これにより任意後見契約は成立したことになりますが、ご本人がお元気な間はこの契約の効力が生じることはありません。(但し、みまもり契約という制度があります)
そして将来ご本人の判断能力が低下してしまった時に、支援者(後見人になる方)は家庭裁判所に後見監督人の選任の申立てをします。その申立てに基づき後見監督人を選任(司法書士や弁護士が選任されることが多い)の審判を経て、ご本人への支援が始まることになります、後見監督人はご本人と後見人との約束が守られているか厳しくチェックすることが使命です。

(注1)⇒『この人なら大切な財産の管理を任せられる!』と心の底から思える方を選んでください。
長い付き合いになりますから妥協は絶対にしないでください!

当事務所では任意後見契約を結ぶ場合、最低でも3回以上の面談を行い、双方が相手方の考え方や相性を理解できる期間を設けた上で、双方が充分納得できてからの契約になります。

法定後見制度(すでに判断能力が衰えてしまった方)

判断能力が衰えた高齢者の方が、悪質業者を含めた様々なセールスから本当に自身に必要な物やサービスだけを買うことは難しいと思います。巧みなセールストークに根負けしたり、だまされたりして不本意にも契約をしてしまうこともあります。また、在宅介護のヘルパーさんを手配したり、時には入院したりすることもあるでしょう。

こんなとき、ご本人のために、契約の取消ができたり(同意権・取消権)、ご本人に代わって介護施設、病院との契約・支払いをしたり、預貯金等の管理する人が必要になります
しかしすでに判断能力が不十分になっているので、任意後見契約のように契約によって依頼できません。
そこで、法律により定められた申立人(本人、配偶者、四親等内の親族など)が後見開始の審判を家庭裁判所へ申立てして、これにより法定後見人が選任されます(注2)
申立て時に後見人になる方の候補者を立てることは出来ますが、必ずしもその候補者が選任されるとは限りません、あくまでも家庭裁判所の判断に委ねることになります。親族を候補者にしたが選任されたのは司法書士ということは珍しいことではありません。

法定後見人は家庭裁判所の監督下に置かれ、定期的に報告書の提出が義務付けられています。また、必要に応じて後見監督人が選任される場合もあります。
(注2)⇒様々な事情があるでしょうが、申立てによる弊害も考慮しなければならず、安易な申立ては避けるべきです。当事務所では経験則も踏まえ、それらの点を申立て前に説明させて頂き家庭裁判所への申立書類の作成、アドバイスをさせていただいております。
⇒申立て前に注意すべき事

見守り契約
具体的な支援はしませんが、定期的に連絡をとり、ご本人を見守りながら信頼関係を継続させるための契約です。面談や交流を定期的に行うため、適切な時期に任意後見監督人選任申立ての手続きをすることが出来ます。

死後事務委任契約
一人暮らしの方や親族に迷惑をかけたくないと思われている方が、自分の葬儀や死後の各種手続きを受任者と生前に契約することです。
任意後見契約は、依頼者が亡くなってしまうとその全部の効力を失うのが原則です。後見人の権限はなくなり、権利義務等の権限は各相続人に相続されることになります。とはいっても任意後見契約は元々、身寄りの少ない方が契約するものですから、相続人となる遠い親戚等は喪主になって葬儀を行うことや、面倒な各種手続きはやりたがらないことが多いのです。
そこで自身が元気なうちに、任意後見契約とセットで死後事務委任契約も締結される方も増えてきているようです。

民事信託契約